心憂しども旅路は続く

稼いだ日銭で国内を旅する24歳サラリーマンの雑記。

前橋① ~近くて遠い県庁所在地の不思議~

群馬県でいちばんの街は?という問い。

 

「高崎」……模範解答ですかね。

「みなかみ」……面積に着目したんですね。

「館林」……暑い暑すぎる。

 

「前橋」

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………この画像が思い浮かんだ人はネットの見過ぎです。

でも、高崎のイメージはあっても、前橋について具体的なイメージを持っている人はやはり少ないのではないでしょうか。

要因はいろいろあると思います。

まず、高崎は都心から電車で一本。路線名もまさに「高崎線」です。

前橋は高崎より若干遠いうえに、両毛線に乗り換えの必要があります。

私自身、高崎へは何度か行ったことがあるのに、前橋には行ったことがありません。

そんな「近くて遠い」県庁所在地、前橋に行ってみることにしました。

 

新前橋駅から前橋駅

青春18きっぷを片手に高崎線を北上していきます。

高崎を通り過ぎ2駅。新前橋駅に到着します。

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ここで両毛線に分岐しますが、駅のホームから見えるのは工場。

ビル群や歓楽街はありません。

なんとなく新山口駅山口駅の関係性を思い出しました。

県庁所在地へ向かうのに幹線からローカル線に乗り換えるのは不思議な気分です。

 

朝、東京を出でて渋川に行く人は、昼の十二時頃、新前橋の駅を過ぐべし。畠の中に建ちて、そのシグナルも風に吹かれ、荒寥たる田舎の小駅なり。

萩原朔太郎(1925)「郷土望景詩」『純情小曲集』新潮社

 

「畠の中」とまでは言わずとも、100年近く前の雰囲気は今も変わらず。

県庁を前橋にとられた高崎市が報復のために、渋川方面にまっすぐ北上して鉄道を敷設するよう計画を推進したという説があるそうです。

 

もっとも、ここから前橋市中心街へは利根川を渡ることになります。

高崎から前橋を経由して渋川方面だと、利根川を渡ってもう一度利根川を渡って戻るルートになります。

単純に、架橋してまで迂回するルートをとるのが、急ピッチで鉄道を張り巡らせていた時代にはそぐわなかった、というのが真実な気がしないでもありません。

上記のエピソードは高崎と前橋の歴史的な主導権争いに脚色されているかもしれません。

新前橋から利根川を渡りたった1駅。前橋駅に着きました。

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あまり高崎と比べるのは、前橋の人に失礼ですが、それでもやはり小ざっぱりとした印象を受けます。

よく、高崎は「商業都市」、前橋は「行政都市」という分け方をされます。

性格が違う都市が県内でしのぎを削るというのはよくあることです。

 でも、駅を出た瞬間の雰囲気までこうも違うのはなかなか面白いです。

駅前からは整然とした大通りが伸びています。

その大通りの先に前橋市の中心街があります。

そちらへ歩いてみることにします。

 

中央前橋駅

1キロほど歩くと商業ビルも増えてきます。

そして、堂々たる威容の山脈も近づいてきます。

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ビルの合間からは雪化粧をした山々が覗きます。

前橋は盆地です。山を背後に街が続いています。

 

山に圧倒されていると中央前橋駅にたどり着きました。

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もしかしたら、この時点で混乱している人もいるかもしれません。

新前橋駅」、「前橋駅」ときて、「中央前橋駅」が登場しました。

こちらは上毛電気鉄道という私鉄の駅、桐生市西桐生駅まで結んでいます。

「中央」と名が付くのは、前橋駅より中心地に近いからです。

絹織物産業で栄えた桐生と結ぶ市民の足、と言いたいところですが、経営はかなり苦しいそうです。

桐生までの直線距離はJRより短いんですけどね。

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広瀬川の川べりに線路があります。

天気がいいこともあり、気持ちのいい朝の風景です。

赤城山から吹き降ろす空っ風が少々寒いですがね。

柳の木の下のベンチでコーヒーを飲んでいると、ゆっくりと列車が動き出しました。

まばらな乗客を乗せ、東へと向かっていきます。

静かな前橋の朝、こうして毎日が過ぎていくのでしょうか。

ふと、ここが関東の県庁所在地のど真ん中であることを忘れるような、牧歌的な光景でした。

 

ただし、この「牧歌的」というのを誉め言葉として使っていいのかは、少々考えないといけないということをここに付け加えておきます。

街として、うるさいくらいに活気があるほうがいいわけですからね。

先述の通り、ここは「中央」前橋駅

ここが前橋の中心街だったからその名があるわけです。

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幾度も旅先で観た風景ですが、やはり人影はまばらです。

そばには年季の入った雑居ビルがありますが、営業しているかは定かでありません。

 

ここからは中心街の千代田町周辺へと歩みを進めます。

 

②に続きます。

 

 

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