心憂しども旅路は続く

稼いだ日銭で国内を旅する24歳サラリーマンの雑記。

夕張② ~夕張の生き証人と出会う~

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清水沢地区の炭鉱住宅群を歩く

南清水沢駅から夕張川に架かる橋を渡ったところで違和感に気づきました。

その原因はというと、冬の北海道なら当たり前の雪でした。

でも、夕張は明らかに除雪が間に合っていない印象です。

海風が吹き付けるような場所と違って、夕張は山間地なので雪深いのは当然です。

しかし、北海道旅行中に訪れたどの街よりも雪が積もっているのです。

その年、北海道は晴れ続きで記録的な暖冬だったはず。

財政破綻が必要不可欠な市民サービスに影響を及ぼしている、

そう確信をするには十分すぎる光景でした。

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さて、清水沢地区の炭鉱住宅ですが、取り壊しが進んでいます。

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写真ではわかりづらいですが、何か所かが歯抜けのようになっていました。

それとともに、平屋建ての真新しい公営住宅も何か所か目につきました。

古い炭鉱住宅から住民が立ち退き次第、取り壊しているところなのでしょう。

豪雪地帯で人が住んでいない建物を維持することは並大抵のことではありません。

もともとが分譲なのか賃貸なのか気になるところではありますが、

それ相応の補償をして住民が移り住んでいるのであれば悪い話ではありません。

まあ、人口減少の速度からして、おのずと住民が0になった住宅のほうが多いのかもしれませんが、、、

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まだ人がお住まいになっているか、それは容易に区別できました。

最低限、出入り口が除雪してあるかどうかです。

春の雪解けまでこのままなのでしょう。

 

しばらく北に向かって進むと、まだ現役の住宅が増えてきた気がしました。

迷惑をかけないように夕張川沿いに道を外れ、次の目的地に向かいます。

 

旧北炭清水沢火力発電所

炭鉱住宅群から北東方向に炭鉱の歴史を伝える遺産があります。

それがこの旧北炭清水沢火力発電所です。

ただ、ここは閉鎖以後も企業の私有地なので立ち入りはできません。

外観を遠目に見られるところはあるので、そこから眺めましょう。

ちなみに、夏季は予約をすれば内部を見学できます。*1

 

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夕張川の対岸から眺めた発電所です。

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すぐ上流には清水沢ダムが見えます。

ここも水力発電で炭鉱に電力を供給していた炭鉱遺産です。

 

ここからは西進して清水沢駅に向かいます。

途中でセイコーマートがあったので昼食にしました。

北海道において、セイコマは必要不可欠なインフラです。

北海道で食べるホットシェフのカツ丼があんなに美味しいのは何でだろう、、、

濃い目のつゆの味付けが冷えた体に染みるんです。

 

清水沢駅

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清水沢の駅前の様子です。

コンパクトシティの中核に据えているだけあり、現役のお店も多い地区です。

駅巡りをしている鉄道ファンだけでなく、地元の方の人通りもあります。

南清水沢駅から清水沢駅にかけての区間に行政機関や交通結節点を集積させるようです。

 

夕張支線の本数は少ないので、ここからは路線バスで北上します。

しかし、バスの時間までしばらくあるので清水沢駅の構内で休むことにしました。

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清水沢の駅舎を抜けて、ホームに出るとその構内の広さに驚かされます。

単線に不釣り合いな広大な敷地に路線橋の跡もあります。

それもそのはず。かつてはここは複数路線が乗り入れる駅でした。

1987年まで三菱鉱業大夕張鉄道という炭鉱路線が走っていたとのこと。

石炭を積んだ蒸気機関車が噴煙とともにここにやってきたのです。

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駅舎の中には昔の栄華を伝える写真が飾られています。

私はそれをぼんやりと眺めていました。

 

「鉄道が好きなのかい?」

 

ふいに声をかけられました。振り返るとそこにいたのはおじいさんです。

なんと昔は炭鉱関係の仕事をしていたとのこと。

戦後の夕張を知る生き証人なのでした。

 

 

首から提げていたカメラのことで話が弾みます。

昔はフィルムカメラで写真を撮るのが趣味だったと懐かしそうに言いました。

 

「夕張でもな、フィルム買ったり、現像できたんだ。でも、今はもうカメラ屋はない。」

 

そう言うおじいさんの姿は寂しげに見えました。

どれだけネットや物流が発達しても埋まらないものがそこにはありました。

 

おじいさんが駅舎の隅を指さしました。

 

「そこにな、キオスクがあったんだよ。いつ頃だったか、JRになってからもしばらくはあったなあ。」

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思わず本当ですか?と聞き返してしまいました。

 

「まだ今よりもずっと本数も多かったし、ここも賑わっていたよ。」

 

おじいさんはたまに懐かしくなってこうして駅に来るんだそうです。

貴重なお話をお聞かせいただいたことに感謝し、別れを告げました。

 

「鉄道がなくなってもたまには来てな。」

 

ここには確かな人の営みがあるのです。

 

 

③に続きます。

 

 

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